なぜ分数ができない中学生が多いのか

 画像2009年「分数のできない中学生」のタイトルで、塾におけるその実態をこのブログに書いたことがある。その10年前の1999年には『分数ができない大学生』(東洋経済新報社)という本がベストセラーになり、ゆとり教育に警鐘を鳴らしたものである。そして2019年に入るにあたり、もう一度このテーマで書かせていただく。

 「分数のできない中学生」で私は一私塾の数学教師として、分数ができない中学生が多い現状を体験的に報告し、その原因が小学校の算数指導にあると書いた。
 時代は移り、ゆとり教育の反省、少子化による少人数指導、公立中高一貫校の出現などを経て、小学校の算数教育はどのように改善されてきたのであろうか。このことに関してはぼう大な分析が必要で、とてもとても一私塾教師の手に負えるものではない。
 ただ、私の感覚からは、この20年間で小学生の算数力が上がっているようには感じられない。むしろ、それまでと変わらないか、あるいは下がっているようにも感じる。その結果中学生になっても「分数が分からない」生徒は相変わらず数多く存在するにちがいない。そのように感じる理由のひとつは、小学生の学習内容の増加である。算数の教科書もずいぶん厚くなった。
 今の小学算数教科書には、中学で習う文字式、関数、そして方程式まがいの単元も含まれている。学年をまたいで扱われる単位計算の問題も複雑になっている。多少の授業時間の増加があったとしても新しい単元も含めて勉強することになるのだから、児童はもちろんのこと、教える先生も大変であることは容易に察しがつく。先生としては時間の制約で、「はしょって」教えるしかないだろう。そしてこのことが、小学生の算数力の低下につながっていると思うのである。児童にとっては不幸なことである。
 では、どうすれば算数が苦手な小中学生の数を少なくさせることができるか。
 私は、「小学算数とは分数である」と言っても過言ではないくらい、小学生にとって分数は重要だと思っている。だから時間が足りないのであれば、他の単元を「はしょって」でも、分数だけは時間をかけてじっくり教えるべきだと思う。しかし、実際にはこのようにはできないだろうから、結局は分数も「はしょって」教えてしまう。結果、理解力のある子や塾でしっかり勉強している子は別として、学校の授業だけが頼りの子の多くは分数が理解できないまま中学生になっていくのである。
 ご恩塾の小学高学年生と中学生の中にも入塾当初は「算数が分からない」と言っていた子が多い。よくよく様子を見ていくと、皆一様に分数の計算でつまずいているのである。それは、学校の「はしょった」授業の結果、通分や約分の仕方、分数の割り算の原理をしっかり教わってこなかったためである。
 例えば、(分数A)÷(分数B)の計算は、(分数A)×(分数Bの逆数)として計算すれば正解は得られる。多くの場合、小学校ではこのことを既定の事実として教えるだけで、なぜそうなるのかを教えてくれない。この説明を学校で受けたと証言した小学生に私は会ったことがない。つまり、この肝心なことを「はしょって」いるのである。科学には「なぜ」の疑問とその説明が不可欠である。そのことの理解がない限り、子どもたちは納得できないであろう。「納得できない」が「わからない」につながることに時間はかからない。
 有能な教師ならば、(分数A)÷(分数B)=(分数A)×(分数Bの逆数)を子どもたちに理解させるのに10分はかからないはずである。分数の原理さえ分かれば、まったく出来なかった計算問題も正しく解けるようになる。だから、ここははしょらずにじっくりと教えるべき箇所なのである。

 放っておくと死に至る病いも早期に手当をすれば楽に回復できるように、原理を踏まえたしっかりした説明があれば、算数が苦手な生徒を立ち直らせることができるのである。

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