小学算数と方程式

画像 「中学入試 方程式はNG?」とのタイトルで、朝日新聞(2019.3.11)に特集記事が載っていた。ずうっと昔、『おかあさんの算数教室』(2002年文芸社)という本を出し、このことについて書いたことがあったので、なつかしく記事を読んだ。

 『おかあさんの算数教室』で、私は小学生に方程式を教えることの弊害を説いた。その理由は次の2点に集約される。
 第一に、小学生のうちは算数の問題を、ああでもない、こうでもないと様々な角度から考え、発想力をみがくことが大切だと思うからである。ふつう、小さい子どもが最初に書き出すのは、文字ではなくて絵である。言ってみれば、小学生の時期は具象の世界を形作る時期であり、このことがしっかり出来て、次の段階である抽象の世界に進むことが出来る。具象の世界=算数を飛び越して、すぐに抽象の世界=数学に進もうとするのは、ねこふんじゃったも弾けないのにショパンを弾こうとするおとうさんのようなものである。
 第二に、小学生に方程式を学ばせるには時間的に無理がある。中学1年数学では、「正負の数」「文字と式」を勉強した後、方程式(一元一次方程式)に入るのが一般的で、ここまでを終わらせるのに、少なくとも5ヶ月はかかる。今の小学算数は、教えることが多すぎることを前に書いた。その上これだけの時間を確保することと、この内容を小学生に理解させることは到底不可能である。
 さらに加えれば、方程式を使って解ける問題は小学算数にも、中学入試問題にも、そんなに多くないのである。むしろ、小学算数を理解できないために中学数学の問題が解けない場合が圧倒的に多いし、小学算数を使って簡単に解ける高校入試問題が出題される傾向もある。

 朝日新聞の記事には、中学入試と方程式について日能研、サピックス、公文式の3つの塾からコメントが載っていた。
 「数学は、数を抽象化して考える科目であり、具体的で目に見える数を扱う算数とは違う」と日能研代表高木氏が述べている。まったくその通りである。サピックス立見氏が「等式の概念や負の数など、方程式を使うのに理解が必要なものは意外に多い」と話したことは、小学生が方程式を学ぶことは時間的に無駄であることを示唆しており、これももっともである。
 むろん、例外もある。ショパンどころか、リストを見事に奏でる小学生もいるということだし、囲碁のプロになる小学生もいる。算数の世界でも、天才的な頭脳の持ち主はいるわけで、このような人間と普通の小学生とを比較しても意味は無い。彼らが出来たからと言って、だれにでも出来ることにはならない。
 公文式は中学受験塾とは指導内容が異なり、無学年方式なので、中1レベルに入る小学生もたくさんいることだろう。悪いこととは言わないが、あまり意味のあることではないと思う。中学数学を勉強する余裕があるのであれば、公文式の弱点と言われている「文章題」や「表とグラフ」「図形」など、より深い小学算数を追い求める方が、中学進学後に役立つものと思う。

 先日、ある出版社から『おかあさんの算数教室』を電子書籍版で出版することの提案をいただいた。多少の迷いはあったが、もろもろの事情で、この話はないことにしていただいた。

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